遁走曲(fuga)



古い街に血を捨てに行く
別に春でなくてもいい
私が私を裏切って
明るい迷路で力尽きる
夢を見ている



そう これは夢
実際は乾いた世界と濡れた世界が
下手な二重露光のように
交錯する場所を歩いている
魚はいつも溺れていたし
蝶はうろうろと地を這っている
どちらが正しいかなど
果たして意味があるか



どちらも虚構だと思ってしまえばいい
意味のあることなど一つもなかったと
ただ二つの世界のほんの少しずれた部分から
空が見える
その青さに耐えられないのに
足が止まるのは
怖くて仕方がないのに
目が離せないのは
一体何の病なのだろう



これこそ夢だと遠い昔に
強く自分に言い聞かせるべきだった
狂いたいようには多分狂えないし
終わりたいようにも終われない
無限小数みたいな堂々巡りの
これがおそらくきっかけだったから