ゾラの「ナナ」1


中学に入って通学時間が長くなり、何の本を読んだらいいのだろうと思っていたところ、
まず父から薦められたのは 堀辰雄の「風立ちぬ」でした。
(以下、12才時の印象のままに書きます。相当間違っていると思います。)
何だかこの女性は「私」の文学的趣味に付き合わされているように見える。父の娘で
あることも私の後悔も含めて。おまへ呼ばわりだし。
数年前に流行った「神田川」を思い浮かべ、「このヴァレリー(でしたっけ?)好きの男も
長風呂に違いない」=結論。


次に薦められたのは「野菊の墓」でした。
優秀な坊ちゃん(だと思う)マサオが帰省中に、年上の垢抜けたタミさんと一緒に一日を
畑への道すがらあっくりだの春蘭だの野菊の生まれ変わりだの過ごし、学校に帰った間
にタミさんは嫁に行き妊娠6ヶ月で流産してしまい、産後の肥立ちが悪く亡くなってしまった。
(ここの部分だけは注釈をしっかり読んだらしく覚えている)
こんなことなら添い遂げさせればよかったとマサオの母だの民さんの母だのマサオ本人も
それはもうメソメソと(略)
「一体このマサオは何才なの?」=結論。*1


父は次に「出家とその弟子」を薦めてきました。父の娘に対する気持ちもわかります。今読
んだら180度印象が変わるでしょう。でもこれらって中学生女子に理解できる内容でしょうか?
一方私は納戸で半村良の「妖星伝」なんかを見つけて盗み読み、あんまり面白かったので友
人(カトリックの女子校です)に貸したりしていました。*2
「何だかよくわからない位エロっぽい部分はあるけど凄く面白い。こんな面白い話は楳図かず
おの『漂流教室』以来だ。」というのが共通の感想でした。
(『漂流教室』の子ども達と私達はまさに同世代で、サンデー発売日は隣の家の男の子とその
子の家の何故か階段の下でぴったりくっついてわくわくしながら頁を繰りました。その子は1つ
年下でどうも1人で読むのは多少怖いというか、圧倒的な話に巻き込まれまいと思ったのか、
いつも「一緒に読も」と言って塾だの習い事だのしていた私を待っていてくれました。
それ位、あの連載の特に初期の部分は当時の小学生にとって刺激的かつ危ないほどの現実
感があったのです。)


「世の中には面白いことを書く人がいるんだね。でもどうやって探したらいいんだろ?」と友人は
言いました。全く同感でした。




「ナナ」について書こうと思っていたのに前置きばかり長くなってしまいました。続きます。(本当に?)

わが家は只今インフル禍に見舞われていて、連休の予定が目茶目茶です。
休日急患診療所が3時間待ちで野戦病院みたいになってるんですけどこれって全国的な傾向な
のでしょうか?



*1:飼っていた猫にマサオとタミコって名前を付けていた友人がいます。「マサオくん」「タミさん」と呼んでいました。すごくセンスがいいなぁ。

*2:横尾忠則の装丁も活字の色も不思議でした。何故完結編がずーーーっと出なかったのか不思議に思っていましたが、ネットを始めて長年の疑問が氷解しました。現実にもあり得ないようなことがあるんですね。