鳥は


この平穏は
恐怖が支えている



鳥の来ない朝の川を
いつも見ている
いつもの場所に電車がさしかかり
ほんの少し胸が騒ぐ
毎日訪れるほんの少しの不安
ほんの少しの現実 投げやりな愛
鳥の羽音の幻聴
 「4日前、死の位置が曖昧で 私はもう少しで向こう側に 転びそうでした」



狂っているわけではないけれど 多摩川をあいしている
ひろがりを恐れる視野が 鳥達をもとめている



平穏のため?
そう、平穏のためです



「そんなに鳥が好きなら僕の故郷にいらっしゃい
  冬になれば何千羽も集う沼があるから」
耳元で聞きながら戦慄している
わたしは鳥が怖いのです
羽毛のすぐ下が骨である事実
全てを賭けて舞い上がれば
迷うことなく突き抜けなければならない
軽やかで凄まじい日々



拡散をとめようがない自分に
  安堵しつつ苛立ち
死の位置も曖昧なのに
  ひろがりを突き抜けている
私は鳥が怖いのに
  いつも姿を追い求めている



平穏のため?
そう、平穏のためです