九月が近くなると
老いて平たくなった夏空の奥に
風の通り道が現れて
いつの間にか開け放たれた窓の
端から端まで雲が行くのが見える
この緩い結び目を解いたら
凧のように流れるのだろうか
はらりと地面に堕ちるだけなのだろうか
こんなに暢気に
空を見上げていられるのは
罪を犯しつつあるからかも知れない
人はみな
日常の死を迂回しながら
遠い死に向かって歩いていくもの
どこかの尼さんが言いそうなことばだ
その人の頭上に
決して動かずに留まっている
小さな祈りのような
まっしろの雲
それが吹き流されるのを見たいと思っている
ひどいね 私は