懐かしさ ということ

帰りの電車で幼稚園か小学校一年生くらいの女の子が「なつかしい。」と呟いていて
こんなに小さくても懐かしさを感じるのか と驚きました。



私がはじめて懐かしさを感じたのはずっと後だったと思います。
小学校の6年生の2月か3月ごろだったかな。
はるこちゃんというともだちと放課後、一緒に帰っているときでした。
通っていた小学校は、校舎の前に広い幾何学模様のような花壇があって、帰るときには
その間を抜けて歩きました。多分柔らかな日がさしていて、細い通路は埃っぽく、
花壇の土はは溶けた霜で黒く、小さな固い芽がのぞいていました。
どこかとおくから聞こえてくる卒業式の練習の歌声を後にして鳥小屋と池を抜けて正門を
出ようとするときに、はるこちゃんと殆ど同時に、説明できない気分になりました。
「私、今、不思議な気持ちになった。」「私も」という会話があって、「これはなんだろう?」と
言い合いました。 あれは郷愁 というものではなかったかと思う。



卒業のとき、メモリアルブックというものをもらったのですが、
はるこちゃんは、「わたしのこと忘れないでね。あと、あのときのことも。」と書いてきました。
違う中学に進んだ彼女は覚えているかしら?私も途中で学校を変わり、何十年もたって、
それでもこうして記憶を手に取れるのは、それがはじめての感情だったからではないかな。





今年は紅葉を見に、北に行ってきます。すこし元気になってきたので、冬になる前に。