旅先


米原あたり トンネルを抜けるまでは雪でした。
車内で読んだ雑誌には、空からずっと落ちてきた雪が
最後に海に落ちて、雪は消えてしまうけれど、漸く
自分が海だったことを思い出す というような言葉が
書いてあった気がします。



なにかを見ること、出会うということは
私の思う私をどうしても僅かにかすめていて、
その僅かな接触の中にしか私はいないのだから
たとえそうでもぎりぎりまできっと悩むんだよ と
だれかが言ったような気がしました。気のせいかしら。



知らない町で時間が空いてしまって、道行く人をぼんやりと
眺めているのは、ほんとうの私ではないただの私のようで、
とても怠惰でどこか懐かしいです。
風はとても冷たいけれど空は春ですね。