ゆめの話
海は見えなかったけれど
浜辺の草がときどき咲いている
これは海蘭、あそこには砂引草
風はありませんでした
足元の砂はさらさらしていて
歩くたびに崩れて
足跡も残らない
ここにはだれもいない と思ったら
ここを砂漠かなにかと思っているかも知れないけどね
ここはちいさな砂丘で
わたしの家もすぐ裏 と
見知らぬ女が話しかけてくる
わたしは毎日測量をしている このちいさな砂丘を
それなのに
ここにこっそり鉄の箱を埋めにくるひとがいて
迷惑している
きっとあんたもそうなのだろう
あなたは人に相談するということがない
私は相談する人がいるけれどね
ここは私有地でもなんでもないけれど
だからといって住んでいるわたしを
ないがしろにするのは許されない などなど
私はこの人をよく知っている
階段教室で、学生時代のバイト先の売り場で
取材で行った女性の座談会や
PTAや日本人学校でも会ったことがある
口をひらこうとすると
丘の向こうから誰かがやってきて
彼女は私に対するのと
打って変わったあかるい顔で
嬌声をあげて駆け寄っていく
という夢を見ました。
夢で会った人は糸の綻びのように
するすると解けていって
輪郭があるような ないような
浜辺野菊の花が見える
私は埋めた箱を掘り出しにきたのだろうか
この地下深くに