冬の木



1月の都市をとおく離れて
白い壁の光
こころにもないことを言うことは不可能です
こころというのは、言ったことばの傍らに
微かに浮かび上がるものであると
ようやくわかったから



年が明けると
冬は再び色が混じりはじめるまで
光だけを残し
何故ことばにする必要があるのだろうという
問いの切れ端が時折
最後の一枚の葉の影のように揺れます



届けられた紙は
すべて植物の末裔であり
濃紺の極夜が記されているので
引き返さなければならない時を忘れて
光の中で静まりながら
通り過ぎたうつくしさに
何度も踏み迷う



木立あたりに