11月


水のちかくを
あるきながら 
ポケットに手を入れたら
なにからも遠い時計が
入っていることに気づきました



11月の空にはすこし藁の色
多摩川の水はまるく それをとじこめていました
そのみずのいろを
少しガラスにうつしとって



文字盤の下に
秘密をひとつ


落としこむと



秒針がかすかに刻みはじめました
いま に触れるときだけ 生死からも遠い
たいせつなので ポケットの中
指だけで 何度もそっとたしかめています



    すぐうしろにいても
    わからないほど遠い