つぶやき的

  • ある土地の歴史 地名とその由来のぎっしりと詰め込まれた本に  一つの別の地名の記された栞をはさむ
  • 片方の三半規管の小部屋に風が吹いている  どこかの扉が開いているらしい
  • 桐の葉の影からクスノキの葉の影へ  いつのまにかくっきりとした影づたいに自分をころがしていると 木々が途切れたらもう歩けない なぜ足元に光がとどいたりするのだろう?
  • 倒れた場所からなにかが抜け出してその先へ というイメージ  先へと送るひとつのことばを選ぶときには見えないサイコロをころがして ちいさくおおきく喪失を賭けている 長く続けてはいけないだろう そのあとわたしはどうするつもりなのだろう と賭けながら少しあきらめている私を 未来のほうから見る目
  • 中心にありすぎると語れないのだとしたら この破れ目は中心にある 水鳥は帰っていってどこかで別の鳥が囀っている 
  • 片耳で聴きとる 声を  どこからくるかはわかりにくくなったけれど、それほど大したことではない 
  • たまに重機で根こそぎ掘り起こされる河川敷のフェンスの隙間に だれかが遊びから帰るときに忘れた小さな草花の束がおかれていることに 気付いたところからはじまる夕暮れ  誰が気付いたの?
  • 先行することばには 休息の文法 耐え切れずにすぐにさえずってしまう私のような人間は ほんとうは歌や音など必要としていなくて むしろそれらを遮断する人の方が
  • だれもいないひとりの 日々の帰り道には 自分だけの好きな歌を口ずさんでいるといいのに