花市2


夜明けの再開発地の
今朝は撤去される瓦礫の山を
あなたが意味もなく
訪れることはない


花市をひらきましょう と
誰が言ったのだろう?
蝶の屍骸が日の光に晒され
窓辺で見開く幾多の目のないうちに


萌え出てもあてのない
 草花のささやき
一年後は美しいビル街の


灯りを見ることはないのだから
  あきらめは切り揃え


この地を旅してやまない
  酔客にわたしましょう
ショベルの下 矢板の陰
  いまだけの春


都市計画はいつも
 寸分の狂いもなくうつくしいけれど
あいせるかもしれない
 明日を思うより
きらめく破片で手を切りながら
 花市をひらきましょう
なにもかもがすべて白い
廃墟に変わる




サイレンと喧騒につつまれ
やがてはじまる
他人達の朝
これ程きらきらとした一日のはじまりなど
ほかにありはしない