秋は誘惑する


考える必要の無い
こわいことを考えて
一人で気分が悪くなっている馬鹿
というのは
私のことなのだけれど



気付けばここ数日
飼いならした石の横に
変な感傷や回想が
住み着いている



この際なんでも疑ってみた方が
いいような気がしてくる
木々は本当に
寒暖の差や
冷たい雨
吹き降ろす風によって
変質しているのだろうか
そう見せかけている
だけじゃないだろうか



色づき枝を離れ落ちるまで
移ろいやまぬ景色
雨に洗われて
躓けば楽になれる石ばかりが
浮かんで見えてくる
壊したくないって
それは壊れたくないのまちがいでしょう?



木々の下には腐葉土
10月はずいぶんとおさない偽善者のように
水っぽい訴えるような目をして失うことばかり正当化させる
疲れても掠れても弧を描く
少年の空の古いコンパス
遠くの方から
明るく冷たく
秋は誘惑する